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フレキシブルチューブの保持力アップの手法(長くしたい場合)

長いフレキを使いたいという要望はとても多い


<フレキシブル博士↑>
マイク、照明器具、スマホやリモコン等のスタンド、に使用されるフレキシブルチューブは
自由な位置に曲げられるのでとても便利なのだ。

最近好まれるデザインの傾向としてよく聞かれるのが、
遠い位置からずっとフレキを持ってきて、手元でちょうどよい位置に保持したいということである。

確かに、固定するものが近くにないからフレキで支えたいということであろう。
しかし、フレキも万能ではない。特に、長い距離を支えるのがとっても苦手なのだ。

ではなぜ苦手なのか、そのためにどのような工夫をしているのか、
きょうはそのことについて解説しているのでさっそく見てみよう。

 

長いフレキシブルチューブを使うとどうなるか

スタンドとして使われるフレキシブルチューブは、
硬い金属素材の丸線と柔らかい金属素材の三角線の組み合わせでできています。

(参照:どうして自由自在に曲げられるの?

ではなぜ自由な位置まで曲げられ、そしてその位置で固定されているのでしょうか?

その答えは摩擦力です。
そこに何かロック機能があるわけではありません。

金属と金属が密着してずれないように踏ん張る力(摩擦力)と反対に動かそうとする力(荷重)の関係で、
摩擦力のほうが強ければ保持しますし、荷重のほうが強ければ動いてしまいます。

摩擦力は素材の粗さや接合面積、密着度の強さ(圧力)などが関係し、
荷重は載せるものの重量や手などで曲げる力、フレキ自身の重量が関係します。

フレキが長いと、フレキ自身の重量も重くなりますが、
フレキを固定する支点から荷重のかかる力点まで距離が長いため、
小さな荷重で動いてしまうことになります。

「長ければそれだけ摩擦面積も多くなるのでは?」とも思いますが、
実際にフレキで物を支える場合には、フレキ全体に荷重がかかるのではなく、
支点付近の1点に荷重が集中してかかります。

従いまして、フレキの根元部分が曲がってしまうのです。
つまり、フレキの長さと保持力は反比例の関係にあるのです。

そのフレキの長さ、本当に必要ですか?

フレキシブルチューブを長くして使いたいという要望は、その理由として

①根元(土台)から先端までの距離が遠いから
②動かす距離が長いから(位置決めの範囲が広いから)

という2点に集約されます。

しかし、その長さ本当に必要ですか?

フレキを使う一番のメリットは、詳細な位置決めができることです。
誰でも、片手で、簡単に。

その詳細な位置決めをするためだけにフレキを使用することが最も効果的なのです。

例えば下図のようにパイプとフレキの連結をさせる方法があります。
大まかな位置決めはパイプに任せましょう。
そして、パイプの先端にフレキをジョイントして、詳細な位置決めをさせましょう。

稼働範囲が大きい場合は、パイプに大きな動きをさせましょう。
そこでは間接の機能を持たせてもよいですし、
曲げたパイプを根元で回転させるだけでも大きな動きをします。

従って、どうしても長い距離を必要とする場合は、フレキの良さを最大限に引き出すために、
できるだけ短く、本当に必要な部分だけフレキにすることが最も効果的です。

フレキシブルチューブの材質での保持力比較

フレキシブルチューブを短く使うことは、わかりました。

しかしながら、フレキ自身を強くすることは出来なのでしょうか?

フレキ自身に保持力を持たせることは可能です。いろいろな方法があります。

但し、保持力を持たせること=曲げにくくなる、ということは覚えておいて下さい。

保持力を持たせるには、
①摩擦の強い素材のものを使う
②太い素材を使う
③補強材を組み合わせて使う
という方法があります。

まず①の摩擦の強い素材ですが、ステンレス線や真鍮線よりも鋼線のほうが摩擦力が強いです。
またメッキをすることでより一層摩擦力が増し、保持力はアップします。

重い電気スタンドの支柱に使われているものは、鋼製でクロームメッキがされているものが多いです。

収縮チューブや塗装という表面処理もありますが、それほど保持力のアップにはつながりません。

②の太い素材は、当然限界はありますが、
同じ外径でも素材を太くすることで肉厚になり、それだけ保持力がアップします。

但し、この場合内径が細くなり、また、曲げRも大きくなります。

また、素材の三角線にスジを入れたり、曲面に仕上げたりすることで
丸線との摩擦力を上げる方法も取られています。

フレキシブルチューブ全体を補強する方法

③の補強材をくみあわせて使う場合は、
主としてフレキの内部に補強材を挿入することが多いです。

板ライナーまたは、なまし銅管などの形状保持パイプになりますが、
細いフレキをもう1本挿入する「ダブルスタンドフレキチューブ」というものもあります。

フレキの外側に補強する場合は、スプリングで行う場合が多いです。

そして、このような補強材をフレキ全体に施すか、
もしくは最も脆弱な根元付近のみを補強する、という方法もあります。

いろいろな手法の組あわせが大切

そのほか変わったところでは、2本ないしは3本のフレキを並べてからねじり、
2重らせんのような形にして曲げているものを見たことがあります。

いずれにしても、保持力を強くするということは曲げにくくする、ということにつながってきます。

上記のいろいろな手法を組み合わせて、
最適なバランスのものを作り上げていくということが大切になります。

長い距離でものを支えなければいけないとき、フレキが使えなかったと諦めないでください。
きっとまだまだ方法があるはずです。